不思議に思った我々はなぜかと理由を聞いてみたところ、Kさんはことのいきさつを説明しはじめた。彼が現職のメーカーに転職してきたのは、今から三年ほど前のことである。当時の転職理由は、半ば「引っこ抜き」に近い強引なものだった。今の会社がKさんの開発力に目をつけ、自社の新製品開発に力を発揮してもらおうと、社長自ら、直接アプローチしてきたのだ。さして転職する理由もなかったKさんだったが、誰しも「あなたの力が必要だ」と言い寄られて悪い気はしない。
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年収が上がることもあってか、今の会社の設計主任として最初の転職を果たしたわけである。今の会社に移って約二年。最初の約束通り、Kさんは設計主任として思うぞんぶん開発に打ち込むことができた。社内の雰囲気も好意的で、まずは転職に成功したと言っていい。そして、自分の持っていた知識をフルに活かし切り、新しい計測器を開発した。Kさんにとっても会心の出来である。市場で評価されないはずがない、と思っていた。